2010年06月16日

アウトレイジ

北野武の新作映画『アウトレイジ』を、観に行った。すごく面白いわけではなかったが、彼の最近の映画では、いちばん良かったと思った。ヤクザ映画で、ひたすら、人が虫のように死んで行く。教訓もなにもない。

作品名を具体的に挙げるのは割愛するが、一般的に外国のマフィア映画でも、日本のヤクザ映画でも、そういった映画の中では、主役が悪いなりに、どこかで正義が描かれるものだ。しかし、この映画には正義というものがまったくない。だから、映画からなにか真理を得るとか、学ぶものも何もない。繰り返すけど、虫みたいに、人が死んで行く。

人があれやこれや、バラエティたくさんの手法で痛めつけられて、「あ」と思ったら、死んでいるので、仁義を見たいヤクザ映画が好きな人からは、きっと好かれない映画だろう。そして、アートの香りを求める映画ファンからも、好かれないだろう。「あ、死んじゃった」という、乾いた感じがあるだけだ。感動もない。悲しみもない。だから、おそらくこの作品は、感想が出にくいだろう。

私が思うには、死体が、一番よく撮れていた。血だらけの死体を、じいっと見つめるカメラの視線。不思議なことに、死体が、いとおしく思えてくるようになる。人間の胸の、孔のあいた銃弾の埋まった場所や、投げ出された、白っぽい裸の湿った肉体の重み。さっきまで無邪気に(ヤクザなんだけどね)命があった、無防備な生命の「余韻」。それが、いちばんよく描けていたと思う。

そういう意味で、北野武という監督は、これだけ凄惨な映画を描いたところで、彼の本質にあるものは、「純粋さ」なのではないだろうか。

ところで、映画館の中は、白い帽子を深くかぶったお爺さんたちが多かった。女の人もいたけど、謎のお爺さんたちが集団でいた。しかも座席後方に、まとまって座っていた。引退したヤクザたちなのだろうか?それと女性が、映画の途中で何かを落としてしまったらしく、暗がりの中を四つん這いで、しばらくはい回っていた。それも気になった。スクリーンでは、たけしたちの殺し合い、劇場では四つん這いの女と、お爺さんたちの集団。どっちも怖くって、それが私はおかしくってしょうがなかった。
posted by minemai at 00:35| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

Copyright (C) 2003-2007 みねまいこ. All Rights Reserved.